Anna Karenina (アンナ・カレーニナ) — 原書で学ぶ英語 — 読書ガイド
Quick Answer: サンクトペテルブルクの社交界の貴婦人アンナ・カレーニナが若い士官ヴロンスキーに出会い、社会・結婚・自分自身を失っていく一方で、田舎では農民とともに生きようとする貴族レーヴィンが別の種類の幸福を見つけていく。800ページの中に19世紀ロシア社会全体と二つの人生観が詰まった本。ドストエフスキーが一人の頭の中なら、トルストイは社会全体。
サンクトペテルブルクの社交界の貴婦人アンナ・カレーニナが若い士官ヴロンスキーに出会い、社会・結婚・自分自身を失っていく一方で、田舎では農民とともに生きようとする貴族レーヴィンが別の種類の幸福を見つけていく。800ページの中に19世紀ロシア社会全体と二つの人生観が詰まった本。ドストエフスキーが一人の頭の中なら、トルストイは社会全体。
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Why read Anna Karenina?
この本の冒頭文は英語で"Happy families are all alike; every unhappy family is unhappy in its own way."です。直訳すると「幸福な家庭はみな似ているが、不幸な家庭はそれぞれの仕方で不幸である」。800ページの小説を14語に圧縮した一文 — そしてその14語が、英文学でもっともよく引用される冒頭文のひとつになっています。
Why it's approachable
英訳はPevear/Volokhonsky 2000年版が最推奨。800ページの分量は怖いですが、トルストイの英語は意外と平易 — ドストエフスキーの激情的な万連体とは正反対。難しいのは60人を超える登場人物と19世紀ロシアの社会構造(貴族、農民、軍士官、官僚)。CEFR B2〜C1。二か月見越して、一章ずつゆっくり。
英語に移されたトルストイの万連体
Happy families are all alike; every unhappy family is unhappy in its own way. — 小説冒頭文。二つの節をセミコロンで結び、'in its own way'で締める — 英語格言の定石。 Everything was upside down in the Oblonsky household. — 二段落目の冒頭。'upside down'(ひっくり返って)という一つの表現で家族の危機を英語に乗せる。 The wife had discovered that her husband had been having an affair. — 過去完了時制(had discovered + had been having)で時間の層を英語に刻むパターン。
社会階層描写の英語 — 19世紀ロシアの社会構造
Levin was a landed gentleman who lived in the country. — 'Landed gentleman'(領地を持つ紳士) — 19世紀英語でロシア貴族層を移す語彙。 The peasants gathered for the mowing. — 'Peasants'(農民) + 'mowing'(草刈り) — 農民英語の核となる語彙。 Vronsky was a captain of the cavalry. — 'Captain of the cavalry'(騎兵隊大尉) — 英語軍隊階級の定石表現。
自由間接話法 — 人物の頭の中が直接流れる
What had happened? She did not yet know. — 三人称だが'What had happened?'はアンナの頭の中 — 英語自由間接話法のもっとも単純な形態。 He realized that everything depended on her. — 'He realized that' — 外部視点だが内部認識へ入る英語パターン。 Yes, she thought, this is what life is. — 'Yes, she thought,' — 引用符なしで思考を移す英語自由間接話法の定石。
19世紀英語で愛・結婚・社会を同時に扱う
She felt that she could not breathe in society. — 'In society'(社交界で)は19世紀英語で「貴族社交界の中で」を意味。一つの表現で社会批判。 Marriage, he thought, was the most important step in a man's life. — 'Marriage'を主語に+'he thought'挿入節 — 19世紀英語が結婚を社会命題として扱う方法。 All happy families resemble one another. — 冒頭文の別の英訳 — 'resemble one another'(互いに似ている)という格式表現で格言の重みを作る。
A native speaker's view
英語圏大学の文学・心理学・社会学コースの定番。"Anna Karenina principle"(アンナ・カレーニナ原理)は統計学・経営学・生物学でも使われる英語の専門用語 — 「成功にはすべての要素が揃う必要があり、失敗は一つの要素が欠けるだけで起こる」という意味。ハリウッドは80年間で8回映画化。ドストエフスキーが「ロシアの魂」なら、トルストイは「ロシアの社会」。
About Leo Tolstoy
1828年ロシアのヤースナヤ・ポリャーナ(Yasnaya Polyana)の伯爵家に出生。両親を幼いうちに失い、親戚に育てられました。カザン大学中退、砲兵士官としてクリミア戦争に従軍。1862年に結婚し、13人の子供をもうけました。自分の領地で農民学校を直接設立して教えたこともあります。『戦争と平和』(1869年)に続いて『アンナ・カレーニナ』(1878年)を発表 — 35歳から50歳までの15年が彼の黄金期でした。50代に宗教的回心を経験して、全財産を農民に譲渡しようとしましたが、妻と子供たちの反対で家庭内対立。1910年、82歳のある冬の夜、家族と領地を離れて田舎の鉄道駅長の住宅で肺炎で死去 — 最後の逃亡の途中で死ぬという結末でした。ドストエフスキーと並んで19世紀ロシア文学の二大頂点ですが、二人は生涯一度も会ったことがありません — 同じ国に住んでいても。ドストエフスキーはトルストイを「心理的な深さがない」と言い、トルストイはドストエフスキーを「暗すぎる」と言いました。
Personal note
この本は二つの視線で読んでください。一つ目、アンナの悲劇(不倫 → 社会からの追放 → 自殺)。二つ目、レーヴィンの幸福(農民との労働 → 結婚 → 宗教的平和)。トルストイは自分自身をレーヴィンに投影し、アンナは彼が作り出したもっとも悲劇的な女性です。二つの人生を一冊の本に平行に置いて「どちらが本当の人生なのか」を問う本。ドストエフスキーが一つの闇なら、トルストイは社会全体。
Who should read this
ドストエフスキーの次にロシア文学の別の頂点に出会いたい人,19世紀の社会全体が一冊に詰まった本を読みたい人,二か月見越して800ページを読み切る経験が必要な人,結婚・社会・個人の自由について真剣に考えてみたい人